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最高裁判所第三小法廷 昭和24年(れ)219号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人山田思郎の上告趣意について。

原判決によれば、被告人は博多で買入れた判示物品を、税關の免許がないのに、日本から朝鮮に輸出しようと考え、對馬の比田勝から朝鮮行の便船に積載する目的で、先ず對馬に渡り、同島一重港から右の物品を船に積込み、これに便乗して出帆、比田勝到着の直前に捕えられたものである。關税法所定の輸出行爲は、海上にあっては、目的の物品を日本領土外に仕向けられた船舶に積載することによって完成するものであるが、その完成に至る前でも、工作が既に上記の程度に進捗したものは、關税法の罰則等の特例に關する勅令第一條第二項にいわゆる「輸出しようとした者」に該ると解すべきである。論旨は右の物品を比田勝から朝鮮向の闇船に積込む迄の前途の障碍を強調しているけれども、前途に多少の困難があったとしても、それは右の見解を妨げる理由とはならない。それ故に被告人の所爲に、前記勅令第一條第二項後段、第一項を適用した原判決には、所論のように法令の解釋を誤った違法は存しない。

又審理不盡、理由不備の違法も認められない。論旨は理由がない。

よって舊刑事訴訟法第四四六條に從い主文の通り判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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